世界各地で愛され、多様な飲み方をされているコーヒー。特に、インドやモロッコ、タンザニアなどではコーヒーにスパイスを加えて味わう文化が発達しています。
身体を温める、食欲を増進する、血行をよくするなどスパイスには様々な効能があり、古くから料理に使われると同時に薬としても用いられてきました。漢方の生薬と同じですね。
中でもインドの伝承医学であるアーユルヴェーダの考え方を元にしたスパイスとコーヒーの組み合わせは、これからの季節にぴったり。アーユルヴェーダではスパイスの持つ薬理効果を上手に利用して、カフェインの毒性(刺激作用)を軽減したり、胃を荒らさないようケアしたり、リラックス効果をより高めて気持ちを安定させたりと、コーヒーを美味しいだけじゃないちょっとしたエナジードリンク(!?)に変身させることができるのです。
ブラックコーヒーと相性の良いカルダモンは、アーユルヴェーダのキッチンファーマシー(薬に頼らず野菜や調味料で健康を維持しようとする昔からの知恵)においては代表的な消化促進剤のひとつ。特に疲労や悩みごと、ストレスなどで食欲が湧かないときや、胃腸が荒れているときにはぜひ、コーヒーと一緒に使って欲しいスパイスです。
ちなみにアーユルヴェーダでは、カフェインの毒性を中和する目的で用いられます。1日2杯以上コーヒーを飲む習慣のある人は、カルダモンの種を加えるだけなので、身体のためにも2杯目以降はぜひ取り入れて。カルダモンには緊張や不安を取り除き、精神力を高めるという作用もあるので、プレゼンなどの前に摂ってみても良いかもしれません。
・作り方
MEMO
*インスタントコーヒーで淹れる場合は、むいたカルダモンホールの皮と種を水に加えて火に2~3分かけ、そのお湯でコーヒーを淹れるとさらに上品で香り高い1杯に。
*ドリップでコーヒーを淹れる場合は、カルダモンのパウダータイプがおすすめ。コーヒーの粉にカルダモンパウダーを混ぜてから、お湯を注ぎます。しっかりと風味の立つ、効果の高い1杯に。
デザート感覚で飲まれることの多いカフェ・オ・レも、スパイスを入れることで、ヘルシーなドリンクに。おすすめは、身体を温め血行を促進し、代謝を高めるショウガ。生のものよりジンジャーパウダーを利用すると手軽です。
身体の中から温めてくれるので、冷えによる月経痛がある方にもおすすめ。さらに脂肪代謝を促進し、中性脂肪、コレステロール、血糖値を下げるといわれているシナモンパウダーを加えれば、ダイエット中にもうれしいドリンクに! どちらのスパイスも風邪予防にも効果的なのだとか。
また、ホットミルクやギーは、アーユルヴェーダでは心身のアンチエイジングに使われる食材。ミルクの乳脂肪分とギーの油脂分には、便秘を解消してくれるという嬉しい働きもあり、継続して摂ることで、身体に滋養を与えて精神を安定させるとも言われています。
・作り方
MEMO
*ジンジャーパウダーは生のショウガよりも強いため、胃が弱い人は分量を調整しましょう。
*コーヒーを省けば、ホットミルクレシピに。夜食代わりにもオススメです。
*粉っぽさが気になる場合は、①の手順の際にミルクフォーマーを用いると、ミルクとスパイス、ギーがしっかり混ざり、ふわふわの泡が作れます。
身体の冷えが気になる、ダイエット中だけど甘いものを食べてホッとしたい、貧血気味で力が入らない……そんなときに1杯で満足できるのがこちらのコーヒーパワードリンク。カフェ・オ・レでご紹介したジンジャーパウダー&シナモンの黄金コンビに、咳や鼻づまり、肥満にアプローチする黒こしょう、血行促進や感覚神経を高揚させる働きがあるチリパウダー、そして栄養たっぷりの黒ねりゴマと腸内環境を整える甘酒を加えた、冬の冷たく重たい心や身体にアプローチするドリンクです。
ちなみに黒ゴマは、アーユルヴェーダでは生理痛や生理不順にも役立つと言われています。お腹の底からハッピーになれる、フォンダンショコラ並みに重厚感のある1杯をどうぞ!
・作り方
MEMO
*黒ねりゴマが重たすぎる場合は小さじ1~で好みの食感に調整を。黒ねりゴマが多いほど、腹持ちは良くなります。
*ギーの有無も好みでOKですが、入れた方がより腹持ちはアップ。
*甘酒は使いやすくて便利な小さいポーションタイプがおすすめです。
ひと振りすることでコーヒーの風味に刺激を与え、さらに身体に良い飲み物に変身させてくれるスパイスの魅力、伝わりましたか?
淹れたときの芳しいアロマと、カフェインによる適度な刺激作用。コーヒーは、ストレスいっぱいの現代社会においてなくてはならない飲み物のひとつと言えるからこそ、そこに取り入れて欲しいスパイスのパワー。温かい飲み物が恋しくなるこの季節、ぜひ試してみてください。
◎取材協力
アーユルヴェーダカウンセラー&セラピスト 池田早紀
上智大学教育学科在学中にダブルスクーリングで、日本アーユルヴェーダ・スクールの本科一期生入学。ホリスティック医療としてのアーユルヴェーダの勉強を開始。その後フィンランドやマレーシア、北京など世界各地の伝承医学を学んだのち、カウンセラー&セラピストとして独立。
現在は日本各地でのイベントやセミナー など幅広く活躍中。 料理ユニット南風食堂とのとのコラボレーション・クッキングクラス「マハト
チューニング https://mahat-tuning.com/ 」は好評のうち2020年で6期目を迎える。